悪性脳腫瘍では、放射線治療を何度も受けることにより、神経が損傷を受け遅発性の放射線障害が起きたり、放射線壊死と呼ばれる組織の壊死状態になるリスクが高まります。
脳放射線壊死を起こした状態をMRIでみると壊死を起こした脳組織の周辺に浮腫（むくみ）ができていることがわかっており、これが脳全体の血管や組織を圧迫し、何らかの症状が出ている場合が多いと考えられます。
このような悪性脳腫瘍の放射線治療後に起こる放射線壊死については、外科的な治療はできず、薬物療法や高圧酸素療法などの内科的治療が行われていましたが、確実な効果は期待できませんでした。
この先進医療では、まずPET（ペット）検査（ポジトロン断層撮影法）を行って脳放射線壊死を的確に診断します。この時、アミノ酸トレーサー（アミノ酸に核物質で目印をつけた薬剤）と呼ばれる保険未承認の物質を使って、従来のMRI画像診断よりも腫瘍と浮腫の区別を明確に行います。
さらに、抗ＶＥＧＦ抗体（血管新生を抑制する）であるベバシズマブを静脈内に投与することで脳のむくみを改善し、壊死の患部を縮小させることをが期待できます。
ベバシズマブの投与量や投与期間についてはまだ確立していませんが、脳のむくみは永続するものではありません。一定期間をこの治療で凌ぐことにより、脳放射線壊死患者のＡＤＬ（Ａｃｔｉｖｉｔｉｅｓ　ｏｆ　Ｄａｉｌｙ　Ｌｉｖｉｎｇ：自立した生活を目的とした日常生活動作）を維持することができると考えられます。

頭頸部のがん

神経系疾患

2011/04/01～2014/06/30